ある町にクリスマスの夜にだけ鳴るという
不思議ないい伝えがある高い塔の教会がありました。
でもまだ誰もその鐘の音をきいた人はいませんでした。
クリスマスが近づくと、町の人たちは塔を見上げて話しあいます。
「どうすればあの鐘は鳴るのだろう?」
「神さまに贈り物をすればなるって話だよ」
さて、となりの小さな村にペドロという男の子と弟がいました。
ペドロはクリスマスの夜に、弟の手をしっかりつないで
あの不思議な鐘のある教会にむかっていました。
ふたりが町の入り口までいったときです。
道に女の人が倒れているのをみつけました。
「このままほおっておいたら、こごえ死んでしまうよ」
ペドロはポケットから銀貨をとりだすと、弟に差し出しました。
「この銀貨は神様への贈り物だよ。ぼくはこの人を助けるから、ひとりで行っておいで」
「ぼくひとりで?おにいちゃんもあんなに行きたがってたじゃないか」
「いいんだ、さあ、いっておいで」
弟はしかたなく、ひとりで教会にむかいました。
教会では、みんな鐘を鳴らそうと、神さまに立派な贈り物をささげています。
キラキラと、まぶしく光る宝石。
山のような金貨。立派な銀食器。
それでも鐘はなりません。
最後には王様も、大切にしている金の冠を神さまにささげました。
「ことしこそ、鐘を鳴らせてみせるぞ」
けれど高い塔の鐘は、シーンと静まったりかえったままです。
「ああ、王さまの冠でもだめなら、この鐘は永久に鳴らない鐘なんだ」
「そうだ、そうにちがいない」
人々があきらめかけたそのときです。
♪♪♪ カローン、コローン、カローン、コローン…
突然、塔から美しい鐘の音が聞こえてきたではありませんか。
「ああ、なんて美しい音色なんだ!」
「それにしても、鐘をならすほどの贈り物をしたのは、いったい誰だろう?」
そこにいた王さまや人々がふりかえると
そこには、ペドロの弟がはずかしそうに立っていました。
「ぼく、おにいちゃんから預かった銀貨をいちまい、神さまにささげたんだ」
Merry Christmas to All